新しい残業基準
過労死などの一因となっている長時間労働の抑制に向けて、残業時間の長さに応じて残業代割増率を引き上げる改正労働基準法が2008年12月に成立しました。2010年4月の施行です。
改正労働基準法の変更点
これまで残業代割増率は月の残業時間の長さによらず一律で25%以上でしたが、改正労働基準法では、残業時間ごとに3段階で割増率が設定されています。月45時間までは従来どおり25%以上、月45時間超-60時間までは25%より引き上げるよう労使で協議、月60時間超は50%以上のそれぞれ割増率となりました。
これらは、経営体力を考慮して中小企業には当分適用せず、施行から3年後に適用が検討されます。
新基準は、労災認定基準や安全衛生法とも連動
改正労働基準法による残業時間の新基準は、労災認定基準や安全衛生法とも連動しています。たとえば、業務との因果関係が証明しにくい脳・心臓疾患も、月100時間を超える残業が 1ヵ月でもあれば、労災と認定されることや、月100時間を超える残業がなくても、2ヵ月から6ヵ月の間で月平均80時間を超える残業があれば、労災認定されます。
また、安全衛生法では、企業に月100時間を超える時間外・休日労働を行った労働者が申し出た場合は、医師による面接指導を行う義務を課し、月80時間を超える時間外・休日労働の場合は、医師による面接指導を行うことを努力義務としています。
すなわち、労働基準法によって、労災認定基準や安全衛生法の月80時間基準の手前である月60時間でブロックしようとするわけです。
残業時間と労使協定(36協定)
通常、残業時間は労使協定(36協定)で決め、年間を含めた限度時間が基準で定められています。その場合の限度時間基準は、労基法で大臣が定めることができる「時間外労働の限度に関する基準」が適用され、一週間で15時間、3ヵ月で120時間などと限度時間を定めていましたが、これ以上の残業が必要な場合、労使で「特別条項」付きの協定を結べば、実質的に、無制限な残業が可能となっていました。
そのため、当時の厳しい雇用状況を反映して、恒常的な長時間労働が広がるなか、厚生労働省はこの限度を超えることができる期間を、年間で通算6ヵ月以内と制限するように見直しも行ってきましたが、完全な歯止め策として今回の改正による残業代の割増率アップに踏み切ったわけです。
したがって、この改正は月45時間を超える残業は人件費を増大させることを意味しています。
企業にとってかけがえのない従業員の心身の健康とムダに人件費を増大させないために、労働関係法や労務管理手法の様々な知識を駆使して、残業は月45時間以内に抑えるようにする対策が急務となっています。